店舗とECの販促チャネルを改めて考えるヒント
販促担当者にとって、商品を「どこで売るか」「どのようにアプローチするか」は永遠のテーマです。近年はチャネルが多様化し、店舗での購入に加え、ECサイトやアプリでの購買が一般化しました。消費者は状況や目的に応じて購入チャネルを使い分けるようになり、それに伴い販促のあり方も変化しています。 コスメを例にとると、百貨店のカウンターで実際に肌に試してから購入する人もいれば、SNSで話題の商品をECで即座に注文する人もいます。このように「どこで買うか」によって顧客の購買行動や期待値は大きく異なります。
この記事では、店舗購入とEC購入の違いを整理し、それぞれに合った販促の考え方をわかりやすく解説します。さらに、両者を連動させることで生まれる効果についても触れ、最後に「実際に自社でどう活かすか」へのヒントをご紹介します。
店舗での最大の魅力は「実際に商品を手に取れること」です。オンラインではどれだけ写真や説明を充実させても、質感や香り、重さや操作感といった五感に訴える体験を完全に再現することはできません。
コスメであれば肌に塗ったときの発色や伸びの良さ、食品なら香りや鮮度、家電や雑貨なら手に持ったときの感触や操作のしやすさ――こうした体験が「買いたい」という気持ちを後押しします。
さらに、店舗では販売員とのコミュニケーションがあります。「自分に似合う色はどれ?」「ライフスタイルに合った使い方は?」といった疑問に、専門知識を持ったスタッフが答えることで安心感や信頼感が高まり、購入の決め手になるのです。
つまり、店舗購入は「商品+体験+人の関わり」で価値が生まれる場所だと言えるでしょう。
店舗のもう一つの大きな強みは「その場で持ち帰れること」です。急に必要になった化粧品や、イベント直前に欲しいアクセサリーなど、「今すぐ必要な商品」は迷わず店舗が選ばれます。
また、店舗では「ついで買い」も起こりやすい特徴があります。最初は一つの商品を目的に来店しても、陳列やPOPの影響で別の商品に目が留まり、思わず購入してしまうことはよくあります。ECサイトでもレコメンド機能はありますが、やはり「目の前に実物がある」ことが購買欲を強く刺激します。
店舗で購入するお客様は、計画的に比較検討するよりも「その場での体験や雰囲気」で決断するケースが多い傾向にあります。販売員のひと言や、試して得た安心感が「よし、買おう」と背中を押す瞬間になるのです。
また、店舗購入者は「限定商品」や「今だけキャンペーン」といった要素に弱い傾向があります。「ここで買わないと手に入らないかもしれない」という状況は、購入の大きな動機になります。
このように、店舗は「体験」「即時性」「限定性」を武器にできる場だと整理できます。
店舗販促のカギは、「体験させること」と「今すぐ買う理由を作ること」です。
たとえば、サンプル配布や体験イベントは「試せたから安心して買える」という心理につながります。また「数量限定」や「店舗限定商品」を設定することで、お客様の即決を促すことも可能です。さらに販売員が的確なアドバイスをすることで、商品に信頼が生まれ、購入の満足度も高まります。
そして店舗の集客力をさらに高めるには、エリア特性を踏まえた販促設計が効果的です。
- 新商品のサンプル配布を、店舗周辺の住民に事前告知する
- 折込広告やデジタル広告で「期間限定キャンペーン」を広く周知する
- 来店前の情報接触から、店舗での体験へと自然に導線をつなげる
こうした工夫を組み合わせることで、店舗ならではの強みを最大限に発揮できるのです。
ECサイトで購入する最大の理由は「便利だから」です。場所や時間を問わずスマートフォンやPCから注文でき、配送さえ待てば商品が届きます。特に仕事や家事で忙しい人や、外出が難しい人にとっては大きな魅力です。
また、ECの強みは「比較検討のしやすさ」にもあります。価格や在庫状況、カラーやサイズのバリエーション、付属サービスなどを一度に確認できるため、効率的に最適な選択が可能です。
ECでは、レビューや評価といった「他の購入者の声」が重要な役割を果たします。「敏感肌でも使えた」「家族に好評だった」などの体験談は、まだ商品を試したことがない人に大きな安心感を与えます。こうした口コミは単なる情報ではなく「共感」を生み、購買行動を後押しします。

EC利用者は「お得さ」に非常に敏感です。送料の有無、配送スピード、ポイント還元率、クーポンの利用可否などが購入を決める大きな要因になります。
ECで購入する人は、購入前にしっかりと情報収集を行う傾向があります。検索やSNSで調べ、複数商品を比較し、自分に合ったものを選びます。店舗購入のように「スタッフに背中を押されて買う」というよりも、「情報の信頼性」と「条件の合理性」で意思決定する点が特徴です。
また「同じ商品でもどのショップで買うか」を比較するため、ブランド力よりも「価格」「サービス」「利便性」が決め手になりやすいのです。
ECでの販促は、「安心できる情報」と「条件の最適化」がカギです。
レビューや口コミを効果的に表示することで安心感を与え、パーソナライズされた提案で「自分のための商品」と感じてもらえれば、リピートや関連商品の購入にもつながります。
また、EC利用者が多いエリアにはSNS広告やディスプレイ広告で「送料無料キャンペーン」や「限定クーポン」を配信するのも有効です。さらに、店舗で獲得した顧客データをECにも活用することで、リマインドやクロスセルを強化できます。
ここまで店舗とECを分けて整理してきましたが、実際のお客様の購買行動は「どちらか一方に限定される」ことは少なくなっています。むしろ、店舗とECを自由に行き来しながら、自分にとって最も便利で安心できる方法を選んでいるのです。
たとえばコスメの場合、店舗で実際に色や質感を試してから「買うのは後日ECで」という行動はよくあります。ECではポイント還元や送料無料の特典があるため、価格面でメリットが大きいからです。一方で、SNSやECサイトで話題の商品を見つけて、「本当に自分に合うか不安だから一度店頭で試してみよう」と来店につながるケースもあります。
このように店舗とECは「対立」ではなく「相互補完」の関係にあります。連動させることで、次のような効果が期待できます。
- 購買機会の最大化
店舗だけでは「来店できない人」を取りこぼし、ECだけでは「体験を求める人」を逃してしまいます。両方を用意しておくことで、より多くの顧客に対応でき、購買機会を逃さなくなります。 - 顧客体験の一貫性
店舗で得た安心感とECの利便性を組み合わせれば、お客様は「買いやすく、信頼できる」と感じます。例えば「店頭で接客してくれた内容が、ECのレコメンドやメールでも反映されている」と、体験がつながって感じられ、満足度が高まります。 - リピート購入の促進
店舗で一度購入した人に対し、「次回はECで便利に購入できます」と案内すれば、リピートにつながりやすくなります。逆にECで購入した人に「実際にお試しいただけます」と店頭体験を促せば、ブランドへの愛着や追加購入が生まれやすくなります。
さらに最近では、OMO(Online Merges with Offline)という考え方が広がっています。これは「オンラインとオフラインを分けず、シームレスにつなげる」発想です。たとえば、店舗でQRコードを読み込んでEC限定クーポンを獲得したり、ECで店舗在庫を確認して取り置き予約をしたりといった仕組みです。
このような取り組みによって、顧客にとっては「欲しいときに、欲しい方法で買える」体験が広がり、企業にとっては「売上の取りこぼしを防げる」効果が得られます。
つまり、これからの販促は「店舗かECか」を選ぶのではなく、「両方をどうつなげて顧客にとって便利で魅力的な購買体験を作るか」が大きなカギになるのです。
ここまで、店舗とECそれぞれの特徴を個別に整理してきましたが、実際に販促戦略を立てる際には「どちらの特性をどのように活かすか」を比較して考えることが欠かせません。購買チャネルはお客様の生活スタイルや価値観によって選ばれるため、顧客特性に合った販促手法をどう組み合わせるかが成果を左右します。
以下の表では、店舗販促とEC販促を「顧客特性」と「購買動機」「情報の得方」「有効な販促手法」などの観点で比較しました。
比較項目 | 店舗販促 | EC販促 |
---|---|---|
顧客特性 | 五感で商品を確かめたい人、即時性を重視する人 | 忙しい人、価格や条件を比較して納得したい人 |
購入動機 | 体験・接客による安心感、偶然の出会い | 利便性、レビューやクーポンによる後押し |
情報の得方 | 販売員の提案、実物確認 | 商品ページ、口コミ、SNS |
販促手法 | 店頭イベント、試供品配布、限定キャンペーン、折込チラシ・地域広告 | レビュー強化、送料無料、タイムセール、SNS広告、メール配信 |
強み | 体験価値・即時性・信頼感 | 利便性・比較のしやすさ・広範なリーチ |
課題 | 来店までのハードルがある、商圏に依存 | 商品を直接体験できない、競合比較されやすい |
成果を高める工夫 | 地域特性に合わせた来店動機づくり | 購入条件の工夫とリピートにつながる仕組み |
この比較表を見ると、店舗販促とEC販促はどちらも独自の強みと弱みを持っていることが一目でわかります。たとえば、店舗は「体験価値」が強みですが来店してもらうまでにハードルがあります。一方、ECは「利便性」に優れるものの競合比較の場になりやすいため、価格や条件の工夫が不可欠です。
重要なのは、一方を重視するのではなく、それぞれの特性を補い合うように組み合わせて活用することです。店舗での体験をきっかけにECで購入してもらう、あるいはECで調べた情報をもとに店舗で最終決定してもらうなど、実際のお客様は両方を行き来しています。だからこそ、販促担当者にとっては「どちらでどうアプローチすれば効果的か」を常に意識することが欠かせません。
店舗購入とEC購入、それぞれに特徴と強みがあります。店舗は「体験」や「即時性」、ECは「利便性」や「情報量」に優れており、顧客は状況に応じて両方を使い分けています。
大切なのは「店舗とECを切り離さず、全体を見て販促を設計すること」です。
もし、「自社に合った店舗・ECの販促戦略を考えたい」、「オフラインとオンラインを組み合わせた施策を試したい」などお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
当社では、新聞折込・ポスティング・デジタル広告など複数チャネルを組み合わせ、地域特性や顧客行動に合わせた販促施策をご提案しています。実際の事例や具体的な戦略も交えてサポートできますので、まずは一度お話ししてみませんか?