現代のマーケティング環境において、消費者の行動は劇的に変化しています。従来の広告手法だけでは消費者にリーチすることが困難になっています。消費者の60%がインターネットメディアに接触する時間が増加しており、デジタル広告の重要性は日々高まっています。
特に店舗ビジネスにおいては、近隣住民への情報提供手段として、新聞折込広告以外のコミュニケーション手段が必要不可欠となっています。このような背景から、効率的かつ効果的にデジタル広告を配信できるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)の理解と活用が、現代のマーケティング担当者にとって重要なスキルとなっているのです。
DSPを解説したポッドキャスト版Biz Trend Expressもお聴き下さい。
DSPの定義
DSP(Demand Side Platform:デマンドサイドプラットフォーム)とは、広告主が最適な広告枠に最適な金額で配信するためのプラットフォームです。複数のネットワークをまたいで、ターゲティングとリアルタイム自動入札を行うことができます。
需要と供給の関係
DSPの理解には、需要と供給の概念が重要です。
デマンド(需要):広告を出したいと思っている広告主側
サプライ(供給):広告枠を提供できる媒体側
DSPは需要側のプラットフォームとして、広告主の「効率的に広告を出したい」というニーズに応えます。対となるのがSSP(Supply Side Platform:サプライサイドプラットフォーム)で、これは媒体側が収益を最大化するために、広告枠を管理・販売するプラットフォームです。
従来の広告手法との違い
従来の純広告では、事前に決まった価格で特定の期間、特定の場所に広告を掲載していました。しかしDSPを使った広告配信では、
DSPを理解するためには、デジタル広告がどのように発展してきたかを知ることが重要です。以下の年表で主要な変遷を見てみましょう。
年代 | 広告手法 | 特徴 |
1996年頃~ | バナー広告(純広告) | Webサイトの特定広告枠を買い取り、一定期間掲載。費用は事前に固定 |
2002年頃~ | リスティング広告 | 検索連動型。少額出稿可能、クリック課金、オークション制単価 |
2006年頃~ | 行動ターゲティング | ユーザーの検索履歴や閲覧履歴に基づく配信。条件合致ユーザーのみに配信 |
2008年頃~ | アドネットワーク | 複数Webサイトを束ねたネットワーク配信。手間削減とリーチ拡大 |
2010年頃~ | アドエクスチェンジ | 広告枠のインプレッション単位でのリアルタイム売買市場化 |
2011年頃~ | DSP/SSP | 需要側・供給側それぞれの最適化プラットフォーム登場 |
DSPが誕生した背景には、以下のような市場ニーズがありました。
特に興味深いのは、リーマンショック後に金融業界から広告業界に流れた優秀な人材が、こうした高度なオークションシステムの開発に貢献したという背景もあります。
RTB(Real Time Bidding:リアルタイム入札)は、ユーザーがWebページを閲覧する瞬間に、その広告枠に対してリアルタイムでオークションを行う仕組みです。この一連の取引は、わずか0.1秒以下で完了します。
RTBがどのように動作するか、具体的な8つのステップで説明します。
DSPが入札するかどうかを判断する際に使用されるデータには、以下のようなものがあります。
これらのプラットフォームは以下のような関係にあります。
DSPとSSPがアドエクスチェンジを通じて接続し、需要と供給のマッチングが行われます。この仕組みにより、広告主は効率的に目的のユーザーにリーチでき、媒体は収益を最大化できるのです。
DSPでは様々なターゲティング手法を組み合わせることができます。
特に店舗ビジネスで重要なのが位置情報を活用したジオターゲティングです。DSPでは主に3つの位置情報ターゲティングが可能です。
概要:今そこにいる人に配信
例:店舗から半径1km圏内にいるユーザーにクーポン配信
特徴:即時性があり、タイムリーな訴求が可能
概要:過去そこにいた人に配信
例:競合店舗を訪れたことがあるユーザーに自店の広告配信
特徴:行動履歴に基づいた興味関心の高いユーザーへの配信
概要:そこに住んでいる人に配信
例:特定エリアの居住者に地域密着型サービスの広告配信
特徴:継続的な利用が期待できるエリアターゲティング
DSPでは柔軟な配信エリア設定が可能です:
実際のDSPサービスの例として、DSPの機能を見てみると、
例えば、位置情報×ディスプレイ広告に特化したDSPで、以下のような特徴があります。
位置情報DSPは特に以下のような広告主におすすめです。
実際の配信では以下のような設定が可能です:
目的別に選ぶ!最新DSPの特徴と選定ポイント徹底解説
(※)8月19日公開予定
来店計測の仕組み
位置情報DSPの最大の特徴は、広告配信した人が実際に店舗に訪れたかをGPSで計測できることです。これにより、デジタル広告の効果をオフラインの行動と結びつけて測定できます。
広告リフト効果の測定
効果測定では以下のような比較分析が可能です。
DSPでは以下のような多角的な分析レポートが提供されます。
・テーマパーク
目的:近隣学生への認知向上と来館促進
ターゲティング:県内特定エリア内の高校・大学38校で位置情報が検知されたユーザー
手法:学校での位置情報検出履歴を活用したヒストリカル配信
結果:効率的な学生層へのリーチを実現
・外食店
目的:店舗周辺での認知向上と来店促進
ターゲティング:店舗から1km圏内の学校284校で位置情報が検知されたユーザー
成果:広告接触者と非接触者の来店率比較により、広告効果を定量的に証明
特徴:来店計測により、デジタル広告のオフライン効果を可視化
・その他の活用事例
DSPは様々な業種・目的で活用されています。
DSPを選択する際は以下の点を考慮しましょう。
本記事では、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の基礎から、位置情報を活用したターゲティング、来店計測を含む効果測定、そして具体的な活用事例まで、幅広く解説しました。
従来の純広告や単一媒体への出稿では到達が難しくなったターゲット層にも、DSPを活用することで「誰に・どこで・いつ」アプローチするかを緻密に設計できる時代です。特にリアル店舗ビジネスでは、位置情報を活用した広告配信と来店計測を組み合わせることで、オンライン施策とオフライン効果を結びつけた販促戦略の最適化が可能となります。
「DSPについて詳しく知りたい」「自社に合った活用法を知りたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社の業態・目的に応じた最適なDSP活用方法をご提案いたします。
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