TikTok Shopとは何か?~2025年、日本に上陸した新たなEC体験の全貌~
はじめに:SNSからECへ進化するTikTokの潮流
2025年6月11日、日本国内で正式ローンチを果たした「TikTok Shop」。TikTokはこれまで、ショート動画やライブ配信などのエンターテインメント要素で若年層を中心に人気を集めてきたSNSですが、今やそのプラットフォームは"買い物の場"へと変貌しつつあります。SNSとECがシームレスに融合する新しい購買体験──その中心にあるのがTikTok Shopです。
本記事では、TikTok Shopの概要、日本市場におけるローンチの背景と影響、そして今後の展望を詳しく解説します。
- TikTok Shopとは?~定義とグローバル展開の歴史~
- 日本での正式ローンチとその背景(2025年6月)
- なぜ今、TikTokが「Shop」を始めたのか?
- 日本のユーザー環境と利用動向
- 海外の成功事例と日本への期待
- ソーシャルコマース市場統計とデータ
- まとめ:TikTok Shopがもたらす次世代コマースの幕開け
1.TikTok Shopとは?~定義とグローバル展開の歴史~
TikTok Shopとは、ショート動画やライブ配信を視聴しながら、動画内で紹介されている商品をその場でタップし、アプリ内で決済まで完了できる「インアプリ型EC(In-App E-Commerce)」機能を備えた、TikTok独自のコマースプラットフォームです。
いわば、エンタメ視聴と購買行動を融合させた“発見型コマース”であり、ユーザーがコンテンツに没入したまま購買に至るという、従来の検索型ECとは異なる購買体験を提供します。
たとえば、インフルエンサーや一般の投稿者が紹介する商品に「商品タグ(Product Tag)」が付与されており、タップすると商品詳細ページが表示され、そのままカートに追加して購入までスムーズに進めます。ライブ配信中にはリアルタイムで商品の紹介・割引販売・数量限定告知などが行われ、ライブECとしての側面も強く持っています。

出典:Screen Rant
このサービスは2021年にイギリスとインドネシアで試験的にスタートし、ユーザーの反応とパフォーマンスを検証したうえで、2022年には東南アジア全域(タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、シンガポールなど)に順次展開されました。2023年にはアメリカ市場にも本格参入し、同年後半にはGMV(流通総額)が数十億ドル規模に達したと報じられています。
とくにインドネシアやフィリピンなどのモバイルファースト市場では、TikTok自体の滞在時間が長く、生活インフラに近い存在になっていたことから、エンタメとショッピングの融合はごく自然な進化として受け入れられました。
アメリカでもZ世代を中心に、商品検索をAmazonではなくTikTokで行うユーザーが急増しており、「SNSで見てそのまま買う」という消費スタイルが一般化しつつあります。これによりTikTok Shopは、従来のECにおける「検索→比較→購入」というプロセスを短縮・再構築し、シームレスなショッピング体験を提供する革新的なプラットフォームとして注目されています。
2.日本での正式ローンチとその背景(2025年6月)
TikTok Shopは、2025年6月11日、ついに日本市場で正式ローンチされました。これはアジア圏、とくにインドネシアやフィリピンでの急成長を受けた流れであり、日本市場への導入は「満を持して」の展開といえます。
TikTok Shopの本格展開が実現した背景には、以下のような日本特有の市場環境とユーザー行動の変化があります。
日本市場におけるTikTok Shop導入の背景要因
1. TikTokユーザー数の急増と多世代化
日本国内のTikTok月間アクティブユーザー数(MAU)は3,300万人超に達し、ユーザー構成は10代〜20代に加え、最近では30〜40代の“購買決定層”にも広がりを見せています。
特に30代女性のユーザー増加が顕著で、家計を担う層の参加が購買行動の本格化を後押ししています。
2. ショート動画文化の定着と高い視聴時間
日本におけるTikTokの1日あたり平均利用時間は96分(2024年時点)と、YouTubeやInstagramを上回る勢いで上昇中。これは「ながら視聴」や「隙間時間での消費」に適したフォーマットが、日本人の生活スタイルにフィットしている証拠です。
3. 既存ECとの体験の違いと期待感
Amazonや楽天のような「検索ベース」のECでは、ユーザーが、“買いたいものを探す”のが基本です。
しかしTikTok Shopは、動画視聴中に偶然出会った商品をその場で購入できるという、“買う予定のなかったモノに出会う*購買体験を提供します。
この「発見型ショッピング」への期待が、特にファッション・雑貨・コスメ分野で高まっており、消費者のEC利用行動の多様化が進行中です。
TikTok Shopの日本上陸は、単なる新サービスの導入ではなく、日本のEC概念そのものをアップデートする契機となりつつあります。
エンタメと購買が融合することで、従来とは異なる“ワクワクする購買体験”が広がり、これまでリーチできなかった層との接点創出が可能になると期待されています。
3.なぜ今、TikTokが「Shop」を始めたのか?
TikTokがShop機能を実装した最大の理由は、ユーザーの“可処分時間”がすでにTikTok内に集約されているというメディア環境の変化です。
ユーザーは明確な目的がなくてもTikTokを「なんとなく」開き、コンテンツに没入します。その中で偶然見かけた商品に興味を抱き、衝動的に購買へと至る。これは従来の**「検索起点のEC」ではなく、感情に訴える“発見型EC”の最たる例といえます。
さらに、以下の要因がTikTok Shopの導入を後押ししています。
1. 広告収益モデルの拡張
TikTokはShop Ads(商品連動型広告)を導入することで、視聴と購買を連動させた広告在庫の新たな収益源を生み出しました。
従来の動画再生に対するCPM課金に加え、商品のクリックや購入といったパフォーマンスベースの収益を実現しています。
2. クリエイターによる経済圏形成
TikTok Shopでは、インフルエンサーや一般のクリエイターが商品を紹介・販売し、購入ごとに報酬を得る「アフィリエイト報酬型モデル」が実装されています。
これにより、UGC(ユーザー生成コンテンツ)×販売のシナジーが生まれ、プラットフォーム全体に商流が組み込まれていく構造です。
3. EC市場の地殻変動
コロナ禍以降、非接触型・非対面型の購買が急速に定着し、EC利用のハードルが下がりました。
そのなかで動画とショッピングの融合は、特に若年層にとって**「当たり前の購買手段」**になりつつあり、企業側もその変化に対応せざるを得なくなっています。
4.日本のユーザー環境と利用動向
TikTokの日本市場におけるユーザー層は、かつての「10代限定」から大きく変化しています。
今では20〜30代の社会人層や40代以降の主婦層にも利用が広がっており、購買力を持つ層へのリーチが可能になっています。

出典:Humble Bunny
特徴項目 | 詳細データ |
---|---|
年齢分布 | 18〜34歳が全体の約62%を占めるが、2024年以降は35歳以上のユーザー数も右肩上がりに増加 |
男女比・購買行動 | 女性ユーザーがやや多く、美容・ファッション・家庭用品・子ども向け商品などに強み |
利用習慣 | 平均1日96分、複数回アクセス。通勤・休憩・就寝前などに断続的に利用されており、 「ふと目に入る購買導線」が形成されている |
これは、SNSとしてのTikTokのポテンシャルがECにも直結していることを示しています。
このような視聴スタイルは、「エンタメを見るついでに商品に出会う」「衝動買いが自然に起こる」環境を生み出しており、TikTokそのものが購買メディア化していると言っても過言ではありません。
5.海外の成功事例と日本への期待
TikTok Shopは海外市場ですでに実績を伴う成功モデルとして確立されており、国ごとの文化や市場環境に応じた展開が功を奏しています。
国・地域 | 成功要因・特徴 |
---|---|
インドネシア | ライブ配信による「商品紹介+限定セール」のスタイルが定着。特に日用品・美容品・スナックなどが高いCVRを記録。 |
アメリカ | 2024年のGMVは90億ドル超。Z世代・ミレニアル世代を中心に“TikTokで商品を探す”行動が一般化。 Amazonとの比較動画も話題に。 |
ベトナム・タイ | マイクロインフルエンサーによる販売が主流。広告費を抑えつつ、高コンバージョンを達成。 地方ユーザーへのリーチも◎。 |
この成功を踏まえ、日本でも以下のような商材で本格的な活用・売上拡大が期待されています。
-
美容・コスメ系:Before / After動画や比較レビューとの相性抜群
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ファッション・アパレル:着回し動画、モデル風の紹介で拡散されやすい
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スイーツ・食品ギフト:見た目やリアクションで魅力が直感的に伝わる
日本市場では現在、アーリーアダプターとなるブランドやクリエイターがTikTok Shopを活用しはじめており、2025年は本格普及期への分水嶺と位置づけられています。
6.ソーシャルコマース市場統計とデータ

出典:Wiser Notify
TikTok Shopは「ソーシャルコマース」という枠組みの中で語られますが、この市場自体が急拡大フェーズに突入しています。グローバルなソーシャルコマース市場の成長データを見ると、以下のような傾向が明らかになっています。
指標 | 数値・予測 |
---|---|
世界市場規模 | 2025年:2.5兆ドル、2030年:6.2兆ドルまで拡大見込み(出典:Shopify) |
米国市場 | 2025年には年間売上が800〜1,000億ドル超に到達(Statista) |
モバイル経由率 | 全体の67%がスマートフォン・アプリ経由の購買行動(Wiser Notify) |
ライブコマースの浸透率 | アジア太平洋地域では認知度90%以上。とくにZ世代・ミレニアル世代で顕著(Statista) |
統計データ出典:
・Shopify Enterprise - Social Commerce Trends
・Statista - Mobile Commerce Statistics
・Statista - Live Commerce in Asia
7.まとめ:TikTok Shopがもたらす次世代コマースの幕開け
TikTok Shopは、「面白いから見る」「見たら欲しくなる」「その場で買える」という一連の体験をアプリ内でシームレスに完結させる、まさに次世代型のショッピング導線を提供しています。
これまでのECでは“検索”が購買行動の前提でしたが、TikTok Shopでは“出会い”が起点。
つまり、ユーザーの感情・好奇心・偶然性をトリガーにした「感情起点のショッピング」が、消費の新たなスタンダードとして登場したのです。
今後の成功のカギは、企業・ブランド・クリエイターがいかにこの新しい流れに乗れるか、適応できるかにかかっています。マーケティングや販促の手法はもちろん、ブランドの見せ方、ストーリーテリングの方法までが問われる時代が来ています。
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TikTok Shopの登場により、ユーザーの購買行動は“エンタメと広告の融合”へと進化しています。
その流れの中で、TikTok広告の重要性はかつてないほど高まっています。
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